長男が生まれた時、親として真っ先に考えたのは「この子の将来のために、どうやって教育資金を貯めるか」ということでした。
当時は、「元本が保証され、満期になれば定期預金よりは良い利回りで受け取れる」という確実性に魅力を感じ、迷わず「学資保険」に加入したのを覚えています。
それから約7年。コツコツと積み立てを続けてきましたが、先日、その学資保険を解約しました。
本記事では、なぜあえて今、学資保険を解約したのか。そして3人分という巨額の教育費を、今後どのようにして準備していくのか。わが家が辿り着いた最新の教育費戦略を詳しく解説します。
1. 7年続けた学資保険を解約した理由

まず結論からお伝えすると、解約した理由は「返戻率(へんれいりつ)が低すぎるから」。これに尽きます。
わが家が加入していた学資保険の概要は以下の通りです。
- 毎年の掛金: 約15.8万円
- 払込期間: 12年(総額 約190万円)
- 受取総額: 200万円(18歳から5年間、毎年40万円ずつ)
- 受取率(返戻率): 105.7%
もちろん、契約者に万一のことがあった際の「払込免除」という保障は、学資保険ならではの大きなメリットです。しかし、資産運用の視点で考えると、20年近い歳月をかけてプラス5.7%。年利換算すると約0.3%程度にしかなりません。
正直、加入当時は「190万円預けて200万円になるなら、かなりプラスだ」と思っていました。昨今の利上げの影響で、最新の学資保険はこれより返戻率が改善されているかもしれませんが、それでも投資のリターンに比べれば微々たるものです。
さらに、インフレ(物価上昇)が続く現代において、20年後に受け取る200万円の価値が今と同じである保証はありません。学資保険は「インフレ負け」するリスクが非常に高いです。改めて子ども3人の大学費用を計算したとき、到底この仕組みだけではカバーできないと判断しました。
解約にあたり、約5万円の解約金(損切り)が発生しました。学資保険は途中解約すると基本的に元本割れします。この「5万円の壁」があることで、わが家もなかなか解約に踏み切れずにいました。
しかし、「5万円を惜しんで、これまでの100万円をあと10年以上も低金利で寝かせておくこと」こそが、最大の損失であると感じたのです。
2. 【現実直視】「ざっくり」では足りない!大学4年間でかかる費用

では、そもそも大学費用は一体どのくらいかかるのでしょうか。 子育て世帯の皆さんは、その具体的な数字をどこまで把握されているでしょうか。
私自身、以前は「ざっくりこれくらいかな」というイメージは持っていましたが、正直なところ正確な金額までは認識できていませんでした。
改めて、大学4年間でかかる費用の目安(入学金+授業料)を見てみましょう。
| 大学・学部の種類 | 入学金(目安) | 4年間の学費(目安) | 合計(概算) | 備考 |
| 国立大学(全学部) | 約28万円 | 約214万円 | 約242万円 | 文理問わず一律が多い |
| 私立大学(文系) | 約20万〜25万円 | 約380万〜450万円 | 約400万〜480万円 | ゼミ費用等が別途かかる場合あり |
| 私立大学(理系) | 約20万〜30万円 | 約500万〜650万円 | 約520万〜680万円 | 実習費が含まれる |
| 私立大学(薬学部) | 約30万〜100万円 | 約900万〜1,200万円 | 約930万〜1,300万円 | ※6年制のため総額は高額 |
| 私立大学(医学部) | 約100万〜200万円 | 約2,000万〜4,500万円 | 約2,100万〜4,700万円 | ※6年制。大学により差が激しい |
最も費用を抑えられる国立大学でさえ、卒業までには約240万円かかります。私が加入していた学資保険の満期金は200万円。つまり、1番安い国立大学の学費ですら、学資保険だけでは賄うことができないのです。ましてや私立大学を選択した場合には、到底カバーしきれません。
さらに、忘れてはならないのが「生活費」です。もし子どもが「一人暮らし(自宅外通学)」を選択した場合、ここに年間100〜150万円ほどの生活費が加算されます。
もし、3人全員が私立大学に進み、かつ一人暮らしをすることになったら……。 そう考えると、単なる貯金や利回りの低い保険ではなく、相当計画的、かつ効率的な準備が不可欠であることが痛いほどわかります。
学費よりも恐ろしい「仕送り」の壁。
学費以上に家計を圧迫し、見落としがちなのが「一人暮らしの費用」です。 大学への納入金だけでなく、子どもが自宅を離れて暮らすとなれば、年間100万〜150万円という莫大な仕送りが発生します。
特に注意したいのが、「新生活を始める最初の1ヶ月」です。ここには、想像以上にまとまったお金が必要になります。
賃貸契約のための敷金・礼金や仲介手数料、さらには冷蔵庫や洗濯機といった家電、ベッドや机などの家具の購入費用……。これらを揃えるだけで、入学金とは別に数十万円が一気に飛んでいきます。
一人暮らしの初期費用(例:都内で家賃7万円の場合)
- 物件契約(敷金・礼金等): 約14〜28万円(家賃の2〜4ヶ月分)
- 引越し費用: 約5〜10万円(時期により変動)
- 家具・家電代: 約30〜40万円(冷蔵庫・洗濯機・PC等)
- 合計:約50〜80万円
毎月の仕送り目安
- 家賃: 6〜8万円
- 食費・光熱費・雑費: 約6〜7万円(全国平均)
- 合計:月12〜15万円(年間144〜180万円!)
4年間で、学費とは別に約600〜700万円が飛んでいく計算になります。
3. 「守り」から「攻め」へ。学資保険の解約金を原資に株式投資へシフト

では、この莫大な教育資金をどのようにして準備していくのか。 私は、学資保険を解約して手元に戻った資金を原資として、本格的に株式投資へシフトすることにしました。
わが家の場合、長男が大学生になるまでにはまだ約10年の時間があります。この「10年」という貴重な時間を、低利回りの学資保険に預けた場合と、全世界株(オルカン)で運用した場合で、どれほどの差が出るのかを比較してみましょう。
1. 学資保険のまま寝かせていた場合
加入していた学資保険をそのまま継続し、解約した100万円をあと10年寝かせていたとしても、増えるのはわずか数万円程度。22年間の満期を待ってようやく「受取率105.7%」になる計算ですから、10年後の時点では、ほぼ「数字が変わらない」状態です。
2. 全世界株(オルカン)に投資し、平均的な利回りで運用した場合
一方で、この100万円を新NISAを活用して「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」などのインデックスファンドに投資し、年利5%(平均的な期待収益率)で運用できたと仮定します。
- 10年後の資産額:約163万円(+63万円)
この差は一目瞭然です。 学資保険では10年経っても100万円がほとんど増えないのに対し、オルカンであれば160万円を超える可能性があります。この時点で、解約時に発生した「5万円の損」など、優に回収できてしまうことがわかります。
もちろん投資に「絶対」はありません。しかし、インフレが進む現代において、10年以上の時間を味方につけられるのであれば、複利の力を活用しないことこそが最大のリスクだと考えたのです。
これからの運用戦略と「こどもNISA」の活用
学資保険を解約した後の資金、そして毎月の児童手当をどこで運用するか。 現在は、未成年が投資をしようとすると「課税口座(特定口座)」しか選択肢がないため、わが家では児童手当なども含め、基本的には「親のNISA口座」を使って運用しています。
しかし、2027年以降に導入が予定されている「こどもNISA(未成年版新NISA)」も活用する予定です。
現状公表されている「こどもNISA」の概要は以下の通りです。
- 年間投資枠: 60万円
- 非課税保有限度額: 600万円
- 引き出し制限: 原則12歳まで不可。12歳以降は子どもの同意があれば教育資金として引き出し可能。
これまでジュニアNISAの終了以降、子ども名義で非課税運用ができる制度が空白となっていましたが、制度が復活すれば、子ども3人分の非課税枠を最大限に活用できる大きなチャンスとなります。

引き出し制限があるので、余剰資金以上に投資してしまうと、いざ使いたい時に使えない場合が出てくるので、注意が必要です。
4. 奨学金を戦略的に活用するという考え方


ただし、投資には常にリスクが伴います。10年後に100%資産が増えているという保証はどこにもありません。そこで、リスクヘッジの一つとして「奨学金の活用」も視野に入れています。
「奨学金はお金が足りないから借りるもの」というイメージが強いかもしれませんが、金融リテラシーを持って活用すれば、それは立派な家計戦略になります。
例えば住宅ローンも、たとえ一括で支払える余裕があったとしても、手元の現金を空にしてまで全額払う人は少ないですよね。それと同じで、奨学金を「低金利の調達手段」と捉える考え方があります。
運用を取り崩さない方が「プラス」になる?
もし、手元に500万円の運用資金があり、年利5%で運用できているとします。このとき、あえて低利子の奨学金を借りて学費を賄うと、どうなるでしょうか。
- パターンA:手元の500万円を学費で使い切る → 4年後、資産はほぼゼロ。
- パターンB:奨学金を借り、500万円を運用し続ける → 4年後、500万円は複利でさらに増えている可能性が高い。
卒業後、増えた運用益の中から奨学金を一括返済しても、手元にお釣りが残る。まさに「お金に働いてもらう」ことで教育費を捻出する戦略です。
奨学金は誰でも借りられるのか?
「うちは共働きだから借りられないのでは?」と思う方も多いですが、貸与型(第二種・利子あり)であれば、世帯年収1,000万円を超えていても、子ども3人の多子世帯などは採用されるケースが多くあります。
ここで、2026年現在の想定利率を比較してみましょう。
- 奨学金(第二種・利子あり): 年0.1%〜1.0%程度(非常に低金利)
- 新NISA(期待リターン): 年3%〜5%程度
例えば、年利0.5%で奨学金を借り、手元の資金を年利4%で運用し続けることができれば、その差額「3.5%」分が卒業時に「利益」として残る計算になります。
さらに、2025年度(令和7年度)からは、子ども3人以上の多子世帯を対象とした「授業料等の無償化」が、所得制限なしで拡充されています。まずはこの「返さなくていい制度」を使い倒し、それでも足りない分を戦略的に借りて、手元の資産運用を継続する。
これこそが、3人兄弟という「数」を強みに変える、多子世帯ならではの教育資金戦略です。
5. まとめ
今回、学資保険を解約して5万円の損を確定させたことは、家計管理の上では一つの失敗かもしれません。しかし、子ども3人の大学費用という現実的な金額を改めて計算し、現在の物価上昇のスピードを考えたとき、わが家にとっては必要な方向転換だったと感じています。
これからは、今回手元に戻った資金を新NISAなどで運用し、時間を味方につけて資産を育てていく予定です。もちろん投資に絶対はありませんが、低利回りの保険に22年間固定してしまうリスクを避け、状況に応じて資金を動かせる「自由度」を持っておくことは、多子世帯の家計にとって大きな強みになると考えています。
また、単に「貯める・増やす」だけでなく、低金利な奨学金制度など、利用できるものはすべて活用していくつもりです。
教育費の準備に正解はありませんが、一つの方法に縛られすぎず、その時々のベストな選択肢を組み合わせていくことが、結果として子どもたちの将来の選択肢を広げることに繋がると信じています。この記事が、わが家と同じように「今の積み立て方で足りるのかな?」と迷っている方の、検討材料の一つになれば幸いです。










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